Sakura-bito with Japanese Traditional Craftsmen

COLUMN

【福井・越前和紙】やなせ和紙 柳瀬晴夫さんインタビュー2

福井県の越前和紙は約1500年の歴史を誇り、最高品質の和紙として名を馳せています。

紙祖 川上御前が和紙の流し漉き技法を伝えたとされる紙の里の人々は、川上御前を祀る岡太神社・大瀧神社に見守られながら、伝統の製紙技法を代々守り継いできました。

さくらびとの「越前和紙と鹿革の福来お札入れ」の越前和紙を手掛けるやなせ和紙は、奉紙、ふすま紙といった伝統和紙から、デザイナーやアニメーションスタジオとのコラボ雑貨まで現代的な技法まで挑戦している工房です。

やなせ和紙社長の柳瀬晴夫さんへのインタビュー 第二回は、「モノづくりにかける想い」そして、さくらびとの「越前和紙と鹿革の福来お札入れ」にまつわるお話です。

【福井・越前和紙】やなせ和紙 柳瀬晴夫さんインタビュー 前回の1はこちら

「モノづくり」の最初の一歩に携われる醍醐味

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――伝統的な和紙製品だけでなく、様々な技法や製品に挑戦される情熱はどこから来るのでしょうか?

僕らはモノを作る立場の者なんで、いろいろ思いついたことを試してみることが大事ですね。どんな世界でもそうやと思うんですけど、やっぱりモノを作らな始まらない。商品を売ってくださる人もいて買ってくださる人もいるんですが、始まりはやっぱりモノを作ることなので。
僕はいろんなモノを作れる立場にいるということが楽しい。
これがないと始まらんやろというところが。世の中に誕生させる最初の一歩になれるんですよ。それがたまたま僕は「紙」やった。

――越前和紙ならではのチャレンジ精神というのも、背景にあるのでしょうか?

越前和紙っていろんな種類があるんです。これは凹凸があって丸い模様が付いてますよね。

越前和紙はチャレンジするんですよね、こういういろんな技法に。

他所の産地の方も、もちろんいろいろなさってますけど、どちらかっていうと、こうぞの紙の二三判・きくばんの紙だけとかのケースが多い。加工は別のところへお願いしてることも結構多いようです。

でも越前の場合は、僕が仕事入った頃から、こういういろんな加工を自分の工場でチャレンジしてやってみる風土があった。ですからお客様からこんな珍しい紙漉いてもらえんかってきた時も、とにかくチャレンジしてみる。やってみますと。できるできんは、やってみてから考える話。もしできなくても、チャレンジして失敗したことって僕らの経験として残っていくんです。例えば五年後くらいに、よく似た話がきた時に具体的な相談ができるんですよね。

ああ、何年か前失敗したけど、あそこはこうすれば良かったんだという記憶が残るので。結局、失敗を通して自分の幅を広げられるし、将来的にはいろんなことが可能になってくるんですよ。

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黄色の渦模様で金運を盛り上げる

――今回手掛けてくださった財布の仕切り紙は、黄色の輪のイメージですね。どのような意味が込められているのでしょうか。

黄色の輪のイメージは、「渦」なんですよ。和紙の紙漉きは水とは切っても切れない技法です。水を使っていろんな模様を作るというのは昔から先人がやっています。僕らも道具を使っていろんな形のデコボコ作る時にはほとんど、水を使います。

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――紙を伝えた神様の伝説が伝わる、越前和紙ならではの金運との関わりは何でしょうか?

以前、戦時中はお札の紙も漉いていた里なので、何年か前から「お札のふるさと」と名乗っています。実は、江戸時代に藩札を作ったのは、福井県(福井藩)が全国で初めてで、その時ももちろん越前和紙の紙を使っていました。

岡太神社・大瀧神社は金運が上がる神社として紹介されていますし、神社そのものが金運にあやかっている所です。そこで宮司さんお墨付きの紙にしていただいたので、金運が上がると思います。

それに、この模様は渦をイメージしています。そこからいろんなものを渦の中に取り込んでいって、みんなで金運を盛り上げていこうという想いを込めています。

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和紙の里に生き、和紙の奥深さに挑戦し続ける

――柳瀬さんにとって、ずばり越前和紙とは。

もちろんこれからもずっと自分の生業ですね。

ふすまが今までメインでしたけど、ふすまの需要が落ち込んでいっても、絶えず、代わりの新しいことにどんどんチャレンジしていきます。

この越前和紙の里では、職人が必ず今後も和紙を作り続けて、次の世代また次の世代へと技術を譲りながら、栄えていくと信じております。
次にどのような和紙の依頼があるか、どのような技法に出会い、奥深い和紙の世界にチャレンジできるか。職人ならではのものづくりの醍醐味を自ら生み出し、受け継いでいきたいですね。

やなせ和紙 Webサイト   https://washicco.jp/

有限会社やなせ和紙
代表取締役 柳瀬晴夫
福井大学繊維染料科卒。1978年有限会社やなせ和紙に入社。家業であるふすま紙、奉書紙など伝統的な越前和紙の製品から、デザイナーズコラボの立体製品、アニメーションスタジオのオリジナル商品まで幅広く手掛ける。伝統の技法と新たな製法を組み合わせ、越前和紙の可能性に挑戦し続けている。

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