日本において、花といえば、桜。その美しさは神々しく、妖しく、幻想的ですらあります。
桜の“さ”は神様のこと。昔はこの“さ”が山から田に降りると春になると考えられていました。そして“くら”はそんな神様が依り憑く依り代を意味します。農耕民族の日本人にとって、花見は春が訪れたことを慶び、五穀豊穣、一年の豊作を農耕の神に祈り願う大切な行事。桜はまさに神宿る木でした。
しかし、桜の命は短く、満開の時期は一週間ほどで、ぱっと咲いてぱっと散ってしまいます。この潔さ、儚さを愛で、敬う感性。四季の移ろいに心を寄せ、自然の中に神を感じる。それこそが日本の美意識といえます。そして、伝統を重んじ、「道」を究める日本の精神は、いにしえより受け継がれ、今も息づく日本の文化。
「さくらびと」とは、花見をする人、桜を愛でる人、桜の花のように美しい人を表す春の季語。日本の美意識を匠の技で風雅に、あるいは力強く表現した縁起物で、空蝉(ルビ:うつせみ)に生きる人々に日本のこころを届け、ライフスタイルを美しく華やかに彩ります。